The Month’s Special
ケニア
2015.07.07
アフリカは、あらゆる可能性・チャンスがある ビジネス・フロンティア。── 古山修子さんインタビュー

成長著しく、市場と して世界から注目を浴びるアフリカだが、実情はどうなのだろうか。開発問題を扱う戦略 コンサルティング会社『Dal berg(ダルバーグ)』のナイ ロビ事務所に勤務する古山修子さんに話を聞いた。

Q. 古山さんは、どういう経緯で、アフリカ で働くようになったのですか?

世界をよりよくするために何かした い――。そして、貢献するならアフリカだ と、ずっと思ってきました。その想いを実 現するためには、まずスキルを身につけな ければと考え、銀行と外資系コンサルティ ング会社で10年間働きました。その後、キ ャリア転換のためにアメリカの大学院で行 政・開発学を学び、卒業後に国際金融公社を経て今の会社に入りました。

ダルバーグは、利潤追求型の会社ではな く、ビジネス・コンサルティングの手法を 生かして途上国の社会的・経済的発展をサ ポートする、社会的企業です。私はこの3 年間、ダルバーグのナイロビ事務所で働い てきました。どうすればアフリカの人々の 生活が改善するか、そのための最も効果的 な方法は何か、このような課題に対し、政 府、企業、財団、NGOなどと一緒に取り組んでいます。

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市場調査などでときどき行く、ナイロビのスラム。

Q. アフリカにおけるビジネスチャンスや 経済的可能性はどのようなものでしょうか?

“アフリカ”といっても、国によって 状況はさまざまで、けっしてひとくくりに することはできません。中には、世界的にも高い成長率を誇る国々もありますが、各 国の状況はさまざまです。抱えている問題 も違えば可能性も異なりますので、その国の実情に合わせて考える必要があります。

人口約10億人というアフリカ市場にはあらゆるビジネスチャンスがあります。アフリカ全体の発展水準はまだまだ低いので、可能性は膨大でほんとうに多様なのです。資源や鉱業はもちろん、農業やサービス業の将来性も期待されています。また、道路・港やエネルギーなどのハードインフラ、およ び保健・教育などのソフトインフラは高い ニーズがあり、それは民間企業にとっても大きな投資機会といえます。

アフリカには、極度の貧困が依然として 存在している一方で、中産階級も増えてき ています。彼らは質の高い消費財に対する購買意欲が旺盛なので、将来的にこの市場 はさらに大きくなるでしょう。しかし、経 済的に豊かな人々と貧しい人々の格差が拡 大しているという事実も、忘れてはいけません。

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ソーラーランタンの小売業者。

Q. アフリカ市場に参入しようとしている 企業、特に日本企業にとって、陥りやすい落とし穴は何でしょうか?

欧米や日本市場における“当たり前”が、アフリカ市場では“当たり前”ではない ことが多いです。このような慣習やニーズ の違いを十分に理解していないために、現地でのビジネスに対応できないケースがあ ります。特に、インフラや人的資源が不十 分な場合、現地の有力企業は、自社投資で 賄ったり代替案を探したりして乗り越えていきますが、日本企業でそこまで対応できる会社はまだ少ないようです。

多くの企業にとって、アフリカはまだ主要な市場ではありません。いわゆるBOP(Base of the Pyramid:低所得者層市場)としての関心は高まっており、公的支援もあ りますので、たくさんの企業が事業可能性の調査はアフリカでも行っています。ただ 多くのケースでは、アフリカ向け事業の調 査を社会貢献への関心が高い一部社員や 、CSR部のみに任されています。このため 、採算のとれる事業として立ち上げる際に 必要十分な社内リソースが配分されないことも多々あるようです。

また、社会性があるがために、通常の新 規事業開拓においては当たり前のように適用される“レンズ”が忘れられていることが 多く、たとえば合弁や買収という選択肢を 十分に検討せず、ゼロから始めて資源を使い尽くしてしまうようなこともあります。これでは、本気で投資すればモノになる事 業も「アフリカでは困難」という結論で終わってしまうリスクがあります。

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私立小学校の教員を対象に消費者調査を行っているところ。

Q. 企業運営において、CSRは重要度を増しています。アフリカでのCSRは、企業にどのような影響を与えると思いますか?

現地企業やアフリカで活躍する欧米 企業の多くは、CSRを、自社の強みを使っ て社会貢献する手段であるとともに、長期 的に自社発展に結び付く“エコシステム”へ の投資と考えています。CSRの社会効果の 度合いを高めるためにも、本業へ好影響を 、与えるためにも、CSRのプロジェクトが その会社の強みや事業活動と関連性の高いものかどうかが重要です。

たとえば、製薬 会社が小・中学校を建設しても、それはよい戦略だとはいえません。 一方、その会社の一連の技術やコアとなる強みを生かしたCSRのプロジェクトは、受益者からも高い評価を受けやすく、事業 分野におけるブランド構築にも役立つでしょう。また、長期的には、事業への移行時 のネットワークや基礎的インフラへの事前 投資と考えることも可能です。たとえば製 薬会社であれば、医療従事者への教育や一般住民への生活指導キャンペーンなどがより戦略的なCSRといえるでしょう。

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パスポート、黄熱病ワクチンカード、現金、蚊よけスプレー、電源アダプター、腹痛用薬電話 SIMカードなど、古山さんがアフリカ大陸内で出張する際の携行品。

Q. アフリカでビジネスを成功させるため の最も実践的なアプローチは何だと思いますか? アフリカでビジネスを始めたい日本企業へのアドバイスもお願いします。

まず不可欠なのは、現地でのネット ワークを築き、現地の慣習を知ることです ね。それから、日本での“当たり前”は通じ ないことを前提に、現地ならではの課題に 対応していくことです。たとえば、日本で は在庫は極力抑えて経費を削減する戦略が よくとられますが、税関等のインフラが整 っておらず、搬送が頻繁に遅延するアフリ カでは、商売のために在庫はとにかく多く 持つという有力企業もあります。先進国で 事業を行うのとは違って、注意を払うべきことがたくさんあるのです。

さらに、NGOなど多種多様な非営利団体 がビジネス支援を行っているので、それら も大いに利用すべきです。助成金、マーケ ティング、流通など、アフリカでビジネス を展開する際に必要な事柄について、アドバイスやサポートが得られるでしょう。

そして何よりも、“予期せぬこと”に対応する柔軟性とリスクを取る覚悟が必要です。それらがないと、アフリカに眠る数多くの ビジネスチャンスをものにすることはできないでしょう。日本が持つ専門知識や技術に対するニー ズは非常に大きいですし、日本製品の質の高さはアフリカでも広く知られています 、しかし、これらの技術や製品、サービスを 手頃な価格で市場に出すということが課題 になっています。もし日本企業がアフリカ 市場に適応できれば、ビジネスチャンスは莫大です。

アフリカには今、世界中から、教育を受け た意欲的な外国人やアフリカ人の帰国組が ビジネスチャンスを求めてやって来ています。多様なセクターにおいて成長が見られ 支社や地域本部をナイロビなどに開設する企業も増えています。また、公共部門・民 間部門の両方に、ビジョンを持ち影響力の あるすばらしいアフリカ人のリーダーがい ます。これらのことは、経済面だけでなく社会的な意味でも、アフリカの未来は明るいということを示していると思います。

 

こやま・なおこ●貧困削減等、社会問題への貢献に特化した戦略コンサルティング会社『ダルバーグ』のアソシエート パートナー。国際開発のためには民間セクターの力が重要 という考えのもと、企業の社会貢献インパクトを高めるため のCSRやBOP事業に関わるアドバイザリーと、途上国政府 の産業政策や投資促進アドバイザリーに主に従事する。津田塾大学、ハーバード大学行政大学院卒業。フランス人の夫と2人の娘とともに、2010年よりナイロビ在住。